基礎より手厚い!障害厚生年金について
年金制度は、大きく国民年金と厚生年金があるため、障害年金も障害基礎年金と障害厚生年金の2つがありますが、ここでは障害厚生年金について紹介します。障害年金は、病気や事故などで身体に障害が残ったとき、先天的な知的障害、精神障害など、あらゆる病気やケガを対象として給付を行います。どのような場合に請求することができるのか「一般的な障害厚生年金」と「障害手当金」についての紹介です。
本題に入る前に、障害年金と老齢年金の関係性について、先に触れておきたいと思います。年金は「収入が少なくなったときに備える」保険です。収入が少なくなってしまうリスクとして、老齢・障害・死亡(遺族)の3つをカバーしているということになります。このうち、障害年金は「老齢年金の受給が始まるまでに」障害によって収入が少なくなったことをカバーするという立ち位置にあります。したがって、老齢年金を受給し始めるともはや請求できなくなるという特徴があります。老齢年金の繰上げを請求してしまうと、障害年金の請求ができなくなるのはこのためです。
以上を踏まえ、障害厚生年金を紹介します。
一般的な障害厚生年金
障害厚生年金が支給されるには、①被保険者等要件、②障害の程度要件、③保険料納付要件という3つの要件をクリアする必要があります。障害基礎年金とほぼ同じですので、障害基礎年金の記事もご参考に。
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まず、①被保険者等要件ですが、「初診日において被保険者であること」のみです。ここでいう被保険者とは、当然、厚生年金保険の被保険者です。なお、「初診日」とは、障害の原因となった疾病又は負傷について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日のことを指します。怪我の場合は判明しやすいことが多と思われますが、精神障害などの場合、初診日がいつになるかを証明(社労士的には「証明」ですが、司法書士的には「疎明」だと思います)することが困難なケースが多くあり、実務で大変なのもここだと思われます。
次に、②障害の程度要件です。「障害認定日」とは、「初診日から起算して1年6月を経過した日」もしくは「初診日から起算して1年6月を経過した日までにその傷病が治ったときは、その治った日」を指します。「治った」とは、症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含むことになります。労災の治癒と同じく、元通りに元気になるのではなく、これ以上治療できない状態まで回復した、ということです。障害基礎年金では1級と2級のみですが、障害厚生年金は3級まで支給の対象となります。1級と2級は国民年金法施行令の別表と同様のため、3級の厚生年金保険法施行令別表のみを掲載します。
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続いて③保険料納付要件です。こちらは障害基礎年金と同じになりますが、要するに、国民年金に入ってる期間のうち3分の2以上は保険料納付済期間または保険料免除期間でなければならない、とういうことです。考え方は老齢年金と同じですので、こちらをどうぞ。
厚生年金の保険料は、給料から天引きして事業主が収めているはずなので基本的に問題ないと思われますが、過去の納付歴も受給要件となっていることに注意が必要です。例えば、22歳で大学を卒業して就職、その半年後に交通事故にあった場合、就職後の厚生年金期間は事業主が保険料を支払っているはずですが、学生時代の国民年金の保険料を支払っていないと、全体として3分の2以上の保険料支払い(免除)の要件を満たせなくなってしまいます。
年金額の計算式は、次のとおりです。老齢厚生年金と同じ計算方法です。2級が基準となっており、1級は1.25倍になります。また、3級は、障害基礎年金の4分の3の額(≒585,700円)の最低保証があります。これは、第3級の障害厚生年金では、障害基礎年金が併給されないことへの救済措置です。
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なお、厚生年金保険への加入月数が300月に満たない場合、300月の保証があります。遺族厚生年金と同じく、会社入社後すぐに障害を負ってしまったような場合の救済措置です。また、第1級と第2級の障害厚生年金には、配偶者加給がつきます。
障害手当金
「年金」ではないのですが、障害厚生年金では、第3級の障害には至らないけど、一定の障害が残った場合、障害手当金という一時金が支払われる制度があります。
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①と④の要件は、障害厚生年金と同じです。②に治癒要件が入ってきます。障害厚生年金は治癒しなくても、初診日から1年6月経てば障害認定日となりますが、障害手当金は、初診日から5年以内に治癒する必要があります。治癒した結果、③厚生年金保険法施行令別表に該当する程度の障害があれば、障害手当金が支給されます。
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障害厚生年金には、障害基礎年金にはない、第3級の障害年金があったり、障害手当金があったりと、障害基礎年金と比べて随分手扱いという印象です。
障害厚生年金に加入中の場合、障害の原因が労災であることも多いかと思います。その場合、両方の年金を受給できるのはできるのですが、労災側を減額調整することになります。
文頭に「一般的な障害厚生年金」と書きましたが、では「一般的ではない障害厚生年金」があるのか、という話になりますが、単にお勉強的な区別の仕方です。ここでは紹介しませんでしたが、障害を負った状況や障害の状態によって「基準障害」や「事後重症」といったパターンや「併合認定」などの制度があり、これに対して「一般的」という意味ですので、悪しからず。


