老齢年金の「受給資格期間」について

平成29年8月1日、老齢年金を受給できるようになるための「受給資格期間」が25年から10年に短縮されました。「10年間年金に入っていれば年金をもらえる」わけですが、この「年金に入っていた」とはどういう意味なのでしょうか。受給資格期間について紹介します。

制度別の老齢年金の受給資格期間
老齢基礎年金老齢厚生年金
保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した「受給資格期間」が10年以上あるとき厚生年金の被保険者期間があって、「老齢基礎年金を受けるのに必要な受給資格期間」を満たしたとき

老齢年金も、老齢基礎年金と老齢厚生年金に分かれています。ただし、このふたつの年金は、受給要件が分かれているようで実は分かれていないのが特徴です。老齢基礎年金の受給要件が分かれば、老齢厚生年金の受給要件は簡単ですので、まずは、老齢基礎年金の受給要件をみていきます。

老齢基礎年金の受給要件は、「保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した『受給資格期間』が10年以上あるとき」です。

受給資格期間となる期間
期間の名前どのような期間か
保険料納付済期間国民年金の保険料を全額支払った期間
保険料免除期間保険料の全部を免除された期間
保険料の一部を免除され、残りの部分の保険料を支払った期間
合算対象期間国民年金に加入できなかった期間
国民年金への加入が任意だった期間
  • 保険料納付済期間は、その名のとおり、国民年金の保険料を支払った期間です。自営業者や無職の人など保険料を直接払う人の他、厚生年金保険に加入中の人とその被扶養配偶者は、厚生年金保険を通じて、国民年金の保険料を払ったことになります。
  • 保険料免除期間には、全額・4分の3・半額・4分の1の各免除期間があります。保険料の全部または一部を免除してもらえますが、一部免除の場合、残りの保険料を支払う必要があります。少し趣の違う保険料免除期間として、学生納付特例制度というものがあったりします。
  • 合算対象期間は、一番分かりにくい期間です。ざっくりというと、国民年金に加入したくても加入できない(加入できなかった)期間や国民年金への加入が任意であった期間です。たとえば、今でもそうですが、20歳前と60歳以後の厚生年金保険期間は、国民年金には入れないので、合算対象期間となります。また、昭和36年から昭和61年までの国民年金は任意加入でしたので、この期間も合算対象期間となります。合算対象期間は、老齢基礎年金の額とは関係ありませんが「受給資格期間」を”稼ぐ”ため認められる期間です。年金額と関係がないので「カラ期間」と呼ばれています。

この3つの期間を足して、10年間(120月)あれば、老齢年金の受給権が発生することになります。なお、保険料未納期間というものがありますが、これは、保険料の免除を受けていないのに保険料を支払わなかった期間と、保険料の一部の免除を受けていたのに残りを保険料を支払わなかった期間です。この期間は、受給資格期間にカウントされません

2階部分の老齢厚生年金は「老齢基礎年金をもらえる人に老齢厚生年金の被保険者期間があれば」支給されることになります。国民年金が1階部分、厚生年金が2階分というイメージを一番わかりやすい形で具現化しています。上記の保険料納付済期間に、1月でも厚生年金保険に加入していた期間があれば、老齢厚生年金の受給権が発生することになります。

ところで、老齢年金の受給資格期間は10年に短縮されましたが、遺族厚生年金の長期要件としての「受給資格期間」は未だ25年のままです。ですから、特に配偶者がいらっしゃる方は「10年間の受給資格期間があるからもう保険料は払わなくてもいいや」とはなりません。なるべく25年(300月)の受給資格期間をクリアできようにしておきたいものです。実際に、年金事務所で老齢年金の請求を処理する際は、受給資格期間が300月に満たない場合、国民年金第3号期間(専業主婦期間)やカラ期間はないかと一生懸命探すようです。

なお、老齢基礎年金、老齢厚生年金の年金額の計算方法については以下になります。その詳細までは紹介しませんが、10年年金であると、加入期間が短いことになるので、決して十分な額にはなりません。

老齢基礎年金額の計算式
基本額(満額)×受給資格期間÷加入可能期間
780,900円×保険料納付済期間+保険料免除期間÷480
厚生年金報酬比例部分額の計算式
分類平均値を出す報酬×給付乗率×被保険者期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数
①+②=報酬比例部分の厚生年金額

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