厚生年金・本老厚と特老厚の違い

老齢厚生年金は、原則として65歳から支給が始まります。これをお勉強的に「本来支給の老齢厚生年金」といいます。一方、老齢厚生年金の支給開始年齢引き上げに伴い、60歳から64歳までの間に順次支給が始まるのが「特別支給の老齢厚生年金」です。現在は「報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金」が、順次支給されています。

「特別支給の老齢厚生年金」のことを「特老厚(とくろうこう)」呼ぶので、ここでは「本来支給の老齢厚生年金」を「本老厚(ほんろうこう)」として呼ぶことにして、このふたつの年金の違いを紹介したいと思います。

違いを紹介すると言いながら、ともに老齢年金として受給資格期間が10年(120月)必要なことと、金額の計算方法については同じですので、これらは前提条件としてください。

根拠条文が違う

老厚は、厚生年金保険法42条に基づいて支給される年金です。一方、老厚は、同法附則8条に基づいて支給される年金です。だから何?という話ではあるのですが、根拠条文が違うということは、このふたつは、法制上、別個の年金ということです。ですから、受給するにはそれぞれ請求する必要がありますし、ここで紹介していくような違いが生じることになります。

受給開始年齢が違う

今更感ですが、文頭にあるとおり、老厚は65歳が、老厚は年代によって60歳から64歳までの定められた年齢が受給開始年齢となります。本年度(令和2年度)は、昭和32年度生まれ(63歳)の男性と、昭和34年度生まれ(61歳)の女性が、特老厚の受給開始年齢に達する年度です。

被保険者期間が違う

老厚は、老齢年金の受給資格期間を満たしたうえで、1月でも厚生年金保険の被保険者期間があれば支給されます。一方、老厚は、老齢年金の受給資格期間を満たしたうえで、1年(12月)以上の厚生年金保険の被保険者期間が必要です。なお、厚生年金保険の被保険者期間が要件に足りない場合でも、受給開始年齢到達後に必要な月数を満たせば、その翌月から老齢厚生年金を受給できることになります。

1階部分が違う

厚生年金は2階部分の年金です。老厚は、原則とおり、国民年金が1階部分に入ってくることになります。一方、老厚の1階部分は「定額部分」です。ただし、昭和24年度以降に生まれた男性と昭和29年度以降に生まれた女性には、1階部分がありません。ですから、今の老厚は「報酬比例部分のみの特老厚」と呼ばれます。特老厚は65歳までの時限年金なので、今、年齢要件だけでもらえる定額部分を受給している人はいません(年齢計算ミスしてたらごめんなさい)。例外として、長期特例(528月加入)や障害者特例(厚年3級以上の障害)という特例に該当すると、1階部分である定額部分が支給されることもあります。

繰上げ・繰下げが違う

老厚は、65歳より前に繰上げたり、66歳以降に繰下げたりして、受給することができますが、老厚は、繰上げ・繰下げという仕組み自体がありません。ですから、例えば、63歳から特老厚の受給が始まる女性が、65歳まで特老厚の請求を繰下げて年金額を増やしたいと考えても、その仕組み自体がないのですることはできません。決められた期間に受給することになります。

在職老齢年金(在職停止)の金額が違う

老厚は、大雑把に言って、年金と給料の合計額が47万円(令和2年度基準)を超える金額になると、年金の一部または全部が停止することになります。一方、老厚は、大雑把に言って、年金と給料の合計額が28万円(令和2年度基準)を超える金額になると、年金の一部または全部が停止することになります。現状、老厚の方が、断然停止しやすい年金となっています。ただ、令和4年4月1日より、この停止基準額が47万円(年度ごとに変動)で統一されることになっています。その頃になれば、特老厚もらう人自体がかなり少なくなってますけどね…。ちなみに、本老厚を止める方を「高在老」、特老厚を止める方を「低在老」といいます。

裁定請求方法が違う

老厚の老齢年金の請求書は、特老厚を請求できる誕生月の3か月前くらいに、年金事務所から角2サイズ(A4サイズ)の緑色の封筒に入った年金裁定請求書(冊子)が届きます。印字されている部分も多いですが、氏名や振込先、雇用保険の情報、配偶者の情報などを記入する必要があります。一方、老厚は、65歳の誕生月に、ハガキが届きます。これに記載して郵送するだけです。なお、本老厚で初めて年金を請求する人や、特老厚を請求しないまま65歳になった人に対しては(このような状態を「老齢が立っていない」などといいます)、65歳になる誕生月の3か月前くらいに、上述の年金最低書(冊子)が届きます。

まとめ

年金が分かりづらい原因のひとつが、老厚と老厚という、一見同じなのに全く違うふたつの老齢厚生年金があることかもしれません。特老厚は、男性は昭和35年度生まれまで、女性は昭和40年度生まれまで受給できますので、この年代までの方は、受給の際にご注意を。

本老厚と特老厚の違い
 本老厚特老厚
根拠条文法42条附則8条
受給開始年齢65歳60歳~64歳
今は男性63歳・女性61歳
被保険者期間1月以上1年(12月)以上
1階部分老齢基礎年金今は原則としてない
繰上げ・繰下げできるできない
在職停止基準額28万円47万円
裁定請求書A4サイズの冊子ハガキ