特別支給の老齢厚生年金とは

話が昭和60年に遡ります。昭和60年の法改正によりいわゆる基礎年金制度が導入され、1階部分に「国民年金」、2階部分に「厚生年金」「共済組合(今は厚生年金に統合済)」の仕組みができました。なお、共済組合をメインに優遇措置3階部分と言われる部分もありましたが、共済組合をきちんと勉強したことがないので、ここでは忖度したいと思います。

さて、全国民強制加入の年金制度を目指して基礎年金制度を作ったのはいいのですが、当時の老齢年金の支給開始年齢は、共済組合は55歳、厚生年金は男子60歳、女子55歳、国民年金は65歳と加入している年金制度によってバラバラでした。そこで国は、世界では65歳受給開始が主流であるというデータを持ってきて、年金受給開始年齢を65歳とし、国民年金以外の年金の受給開始年齢を引き上げることとしました。

この時に考えられたのが「特別支給の老齢厚生年金」です。本来65歳から年金受給(支給)がはじまるところ、65歳になる前から特別に支給する老齢厚生年金ということです。「特別に支給してやるよ!」という上から目線の名称に思えて、当職は、あまり好きなネーミングではありません。

しかし、昭和60年当時、男子の老齢厚生年金の受給開始年齢を55歳から60歳まで引き上げ終えたばかりということもあり、このタイミングでさらに老齢厚生年金の受給開始を65歳まで引き上げると、さすがに国民の反発が強いと考えたのか、実際の引き上げは平成6年の法改正を待つことになります。

そして、平成6年、ようやく厚生年金の受給年齢引き上げ方法と開始時期が決まります。まずは厚生年金のうち定額部分(65歳からの老齢基礎年金に該当する部分)を、男子は平成13年度、女子は平成18年度から12年(!)かけて引き上げることにしました。続けて、平成12年、厚生年金のうち報酬比例部分(65歳からの老齢厚生年金に該当する部分)を、男子は男子は平成25年度、女子は平成30年度から、12年(!)かけて引き上げることにしました。

本年度(令和2年度)は、昭和32年度生まれ(63歳)の男性と、昭和34年度生まれ(61歳)の女性が、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達する年度です。なお、男性は昭和36年4月1日、女性は昭和41年4月1日より後に生まれた世代には、特別支給の老齢厚生年金は支給されないことになっています。共済年金については、男女間の差がありませんので、共済期間のある女性は、共済期間については、男性の表と同じになります。

男性の特別支給の老齢厚生年金
誕生日支給開始時期
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日に生まれた方63歳の誕生月の翌月から
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日に生まれた方64歳の誕生月の翌月から
昭和36年4月1日に生まれた方支給されない
女性の特別支給の老齢厚生年金
誕生日支給開始時期
昭和33年4月2日~昭和35年4月1日に生まれた方61歳の誕生月の翌月から
昭和35年4月2日~昭和37年4月1日に生まれた方62歳の誕生月の翌月から
昭和37年4月2日~昭和39年4月1日に生まれた方63歳の誕生月の翌月から
昭和39年4月2日~昭和41年4月1日に生まれた方64歳の誕生月の翌月から
昭和41年4月2日以後に生まれた方支給されない

年金受給開始年齢を70歳にするという話題をちらほら見かけますが、上述のとおり、女性の受給開始年齢が65歳に引き上がるのが令和13年4月1日です。歴史を振り返ると、その後5年くらい冷却期間をおいて法改正、実際の施行はさらに5年後と考えると令和23年くらいまでは、65歳から受給する年金が生き残るのではないでしょうか。

それはそうと、共済年金の制度遍歴をネットで調べても情報がほとんど出てきませんね。Googleも忖度してるのでしょうか。