老齢厚生年金の差額加算(経過的加算)とは

年金額の決定通知書などを見ると、老齢厚生年金に差額加算(正式名称は「経過的加算」です)と記載され、年金額が上乗せされていることがあります。年金額が増えるのだから気にしないでいいのですが、実際のところ、差額加算とはどういうものであるか、ご紹介します。

基礎年金制度ができるまでの老齢厚生年金は、1階部分を「定額部分」、2階部分を「報酬比例部分」と呼び、1階部分は保険料の多寡に関わらずもらえる額、2階部分は保険料に比例して増減する額なっていました。これが、基礎年金制度が導入されたことによって、老齢厚生年金の1階分である「定額部分」は「老齢基礎年金」が担当することになりました。

従前の老齢厚生年金と現行の老齢厚生年金の構造
 従前の老齢厚生年金現行の老齢厚生年金
2階部分報酬比例部分報酬比例部分
1階部分定額部分老齢基礎年金

しかし、困ったことに計算方法が微妙に違うため「老齢基礎年金」は「定額部分」より金額が低くなるのです。つまり、従前の老齢厚生年金の計算方法の方が有利となるため、その差額を「差額加算」として支給しています。従前の老齢厚生年金が高額になる理由としては「そもそもの設定単価が違う」「20歳未満及び60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間は老齢基礎年金の支給額には反映されないが、定額部分の額には反映される」などの理由があります。

具体的にみていきます。

満額の老齢基礎年金は780,100円です。一方、従前の老齢厚生年金の定額単価(定額部分のひと月分の金額)は1,626円です。国民年金(老齢基礎年金)は480月が加入できる月数の最大値ですので、従前の老齢厚生年金に480月入ったとすると、1,626円×480月=780,480円となり、同じ480月加入した場合、従前の老齢厚生年金の定額分のほうが380円高くなります。ですから、従前の老齢厚生年金に加入していた期間については、従前の定額部分として計算した額と老齢基礎年金との差額を「老齢厚生年金」の「差額加算」として支給します。こちらが「そもそもの設定単価が違う」の例です。

次に、双子の太郎さんと次郎さんで比較です。太郎さんは20歳の誕生日から60歳の誕生日まで会社員として働きました。一方、次郎さんは22歳の誕生日から62歳の誕生日まで会社員として働きました。ふたりとも同じ40年間厚生年金に加入していたことになります。ですから、従前の老齢厚生年金の計算方法では、定額部分の額は全く同じ額になります。では、国民年金(老齢基礎年金)ではどうでしょう。国民年金は20歳から60歳までの40年間が加入期間です。そうすると、太郎さんは480月のうち480月加入したことになりますが、次郎さんは60歳から62歳までの2年間(24月)は国民年金に入れないので、480月のうち456月(38年)しか国民年金に加入していないことになります。この結果、太郎さんは満額の老齢基礎年金780,100円を受給できるのに、次郎さんは780,100円×456月÷480月=741,095円しか老齢基礎年金を受給することができません。同じ40年間働いて、同じ40年間厚生年金に加入したのに、これではあまりに不公平です。この制度上の不公平をなくすため、60歳以降に厚生年金に加入した部分は「老齢厚生年金」の「差額加算」として支給します。こちらが「20歳未満及び60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間は老齢基礎年金の支給額には反映されないが、定額部分には反映される」の例となります。

つまり、こういうことです。

差額加算の役割
 従前の老齢厚生年金現行の老齢厚生年金の構造
2階部分報酬比例部分報酬比例部分
1階部分定額部分老齢基礎年金
制度上金額が足りない部分を経過的加算で補填

昭和41年4月1日までに生まれた方は、今の年金制度が始まったときにすでに20歳を超えていたので、国民年金が480月に届かないことが多いと思います。その場合、20歳前に働いていた期間や60歳以降に働いた期間が老齢厚生年金側に差額加算として支給され、結果的に、国民年金に入れなかった部分を補っていくことになります。実は、これは、昭和41年4月1日後に生まれた方も同じで、高校卒業後すぐに働き出せば、20歳になるまでの間は国民年金の金額にはまったく関係のない厚生年金加入期間になりますし、同様に60歳を過ぎて厚生年金に加入し続ければ、これも国民年金の金額にはまったく関係のない厚生年金加入期間となるので、今この瞬間も、現在進行形で国民年金とは関係のない20歳前60歳後の厚生年金期間が毎月生じています

ということで「経過的加算」と名前が付いていますが、現在の年金制度が変わらない限り加算され続けるので、もはや「永続的加算」です。ですから、年金事務所も単に「差額加算」と表示しているのだと思います。

余談ですが、この記事を書きながら、国民年金側の理由で金額が増えるものは「加算」、厚生年金側の理由で金額が増えるものは「加給」と呼んでいるような気がしてきました。厚生年金は「給料」が保険料だからか?時間と気力があれば、この説を確認したいと思います。