遺留分侵害額請求権とは

遺留分侵害額請求権とは、遺留分を侵害された人が、遺贈や贈与を受けた人に対して、侵害された遺留分を限度に遺贈等されたものの返還を金銭により請求する権利のことを言います。

令和元年の民法改正までは、遺留分減殺請求権といっていました。旧法下では、遺留分権利者がその権利を行使すると、請求された人は、遺贈や贈与で取得した財産の遺留分に相当する分の財産を返還しなければなりませんでした。このため、不動産が共有関係になってしまうなど、実務上の問題点が多々ありました。実際に、不動産登記では「遺留分減殺請求」を登記原因とする所有権一部移転登記をすることになっており、共有関係の土地登記記録を生じさせていました。この点を改め、全て「金銭処理」するようになったため、遺留分侵害額請求権と名称が変わることになりました。

それでは、遺留分侵害額請求権を具体的にみていきます。

まず、遺留分についてです。遺留分とは、相続人が最低限主張できる相続分のことだと理解してください。ここにいう相続人に兄弟姉妹は含みません。遺言によって、被相続人の自由な財産の処分を保障する一方で、残された相続人の生活を保障するという趣旨があります。

遺留分の割合は、法定相続分の半分です(必ずしも正しい表現ではないです。一番伝わるであろう表現をしました)。上述のとおり、被相続人の兄弟姉妹に遺留分はないことに注意が必要です。

遺留分
 法定相続分遺留分複数人いたら
配偶者2分の14分の1
2分の1
4分の1
人数で頭割り
父母3分の16分の1
人数で頭割り
兄弟姉妹4分の1なし

例えば、相続人が残された妻と子がふたりであるとします。このケースで夫が「妻に全財産を相続させる」という遺言をして亡くなった場合、それぞれの子は、法定相続分2分の1×遺留分2分の1÷2人=8分の1となり、遺産のうち8分の1の遺留分を有しており、これを害されことになります。このように自己の遺留分を害された人を「遺留分権者」といいます。遺留分侵害額請求権を行使するかどうかは遺留分権利者である相続人の自由ですが、遺留権者のうちひとりの子が権利を行使した場合、遺産のうち8分の1に該当する金銭を取り戻すことができることになります。ここで注意を要するのは、遺留分を害する遺言自体は有効であるということです。遺留分侵害額請求権は、遺言自体の無効や取り消すを主張する制度でありません。

なお、遺留分額を計算する場合、その前提とし「遺産の総額」を確定させる必要があります。法定相続分を超えた相続や遺贈は、そもそも死亡時の財産の中に含まれているためすべて「遺産の総額」として計上されますが、生前贈与については、次に挙げる贈与のみ、「遺産の総額」として金額が計上されることになります。

  • 相続開始前1年以内になされた贈与
  • 贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与
  • 贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした不相当な対価による有償行為
  • 相続人への10年以内になされた特別受益に当たる贈与

分かりやすくするため、極端な例を挙げますが、父親が飲み屋の女性に財産のほとんどを贈与をしてしまっていた場合でも、それが死亡前5年のものであるなら、相続人たる子は、この女性に対し、遺留分を主張することはできなことになります。

ただ、実務上では、生前贈与が相談に持ち込まれることは少なく、遺言によって相続分を下回る財産しか譲り受けられなかったときや、全く財産を譲り受けられなかったときに、遺留分の相談がなされるケースがほとんどであると思われます。要するに亡くなった時点での財産の行方についての相談が多い、ということです。

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。現実的には、遺言の内容を知ってから1年ということになるでしょうか。相続開始の時から10年を経過したときも、同様です。遺留分侵害額請求権の行使を考えている場合、早めに手続きに着手する必要がありそうです。