自筆証書遺言と公正証書遺言について

遺言には、大きく普通方式と特別方式の方式があり、特別方式は今にも命が途絶えそうとか、今にも乗ってる船が沈みそうとか、かなり特殊な遺言のことですので、ここでは、普通方式についてのみ紹介したいと思います。普通方式の遺言には、さらに、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。ただ、秘密証書遺言については、地元の公証人にも確認しましたが「見たことないし、資料もない」ということでしたので、普通方式のうち、最も一般的な、自筆証書遺言・公正証書遺言について、その方式やメリット・デメリットなどをご紹介します。

自筆証書遺言は、遺言者自身が紙とペンを使い、自分の手(自筆)で遺言書を作成する形式で、作成に際して特段の手続きがいらないので非常に利用しやすい方法といえます。根拠条文はこちらです。

民法968条

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

この条文を読み解くと、遺言者が、遺言全文・日付・氏名を自書し、押印することで、その遺言書は遺言としての効力がある、ということになります。ですから、印鑑は実印でなくてもいいですし、先ほど「紙とペンを使い」と述べましたが、筆と巻物でもいいわけです。ここからは冗談の部類ですが、当職が一般の方向けに講義するときは「襖でも障子でもドアでも何でもいいから、この財産は誰にやるってデカデカ書いとけばいいんですよ。そうしたら、帰省したときに子どもたち色々と考えてくれるでしょ。ただ、印鑑が押せるものに書いておいてね。」なんていう話をします。

ところで、自筆証書遺言は、自書する必要があること自体は変わらないのですが、平成31年1月13日以降、財産目録を添付する場合、財産目録は自署でなくてもよいことになりました。例えばワードで財産目録を作ってプリントアウトしたものでも、不動産なら登記事項証明書をそのまま添付してもよいことになっています。

自筆証書遺言のメリット・デメリットですが、自筆証書遺言には特別な手続きが不要であるため、とても手軽に作成できるのが最大のメリットです。遺言書を書いたことを言う必要もないので、遺言内容を知られることもありません。デメリットとしては、専門家のチェックを受けていない場合、形式不備により無効になってしまう恐れもあること、偽造変造が比較的容易であること、死後発見されない可能性があることなどがあります。そして、当職が一番のデメリットと考えるのは、遺言書の検認手続きが必要であるということです。

次に、公正証書遺言です。公正証書遺言とは、2人の証人の立ち会いの下、公証人が遺言者から遺言内容を聴き取りながら作成する遺言です。作成した遺言書は公証人役場で保管されます。公証人が間違いのない遺言を作成してくれますので、条文の紹介まではしませんが、条文のままだと、さも、その場で遺言の内容を伝えれば、公証人が遺言書を作成してくれるように思えますが、実際は、事前のやり取りを行って、遺言当日はある種のセレモニーみたいなものです。

公正証書遺言のメリット・デメリットですが、公証人が関与するため内容に不備が生じる可能性が低く、公証役場で遺言が保管されるので偽造・紛失の心配もありません。確実な遺言書を作成できるのが、公正証書遺言のメリットです。そして、先程少し触れた遺言書の検認手続きですが、公正証書ではこの検認手続が不要です。当職は、これが公正証書の一番のメリットであると思います。デメリットとしては、遺言書を作成する事前に公正役場と打ち合わせをしたり証人の探したりする必要があるため、手続きに手間がかかります。また、公証人や証人に支払う報酬も必要です。やはり、手間と費用がかかることがデメリットと言えるでしょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
 作成方法メリットデメリット
自筆証書遺言遺言者者自身が作成お手軽
費用がかからない
形式不備の可能性
偽造・紛失・隠匿の恐れ
死後の発見漏れ
検認手続必要
公正証書遺言公証役場で作成確実な遺言書ができる
偽造・紛失・隠匿の恐れなし
検認手続不要
手続が少し面倒
費用がかかる

なお、検認手続についてはこれを回避する「自筆証書遺言の保管制度」が始まっています。興味のあられる方はどうぞ。