国民年金第3号不整合記録問題

原則として、日本に住所を有する20歳以上60歳未満の人は、全員国民年金に加入しなければなりません。国民年金の被保険者の種類は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分類されており、第1号被保険者は、学生、無職の人、自営業の人など厚生年金に加入していない人、第2号被保険者は会社員や公務員など厚生年金に加入している人、第3号被保険者は第2号被保険者の被扶養配偶者となっています。

第3号被保険者は、現在の年金制度が開始されたときに、いわゆる専業主婦をどのように国民年金に加入させるか検討される中で、夫が加入する厚生年金(共済含む)から財源を持ってくることによって、保険料の負担なしに、その妻も国民年金に加入させるとしたものです。夫が働き妻は専業主婦が普通という時代に考え出されたものですから、今の時代感覚からはだいぶズレてしまっていますが、専業主婦は保険料を負担することなく、国民年金に加入できる仕組みが現在まで引き継がれているわけです。ちなみに、度々国会で、第3号被保険者にも相応の保険料を負担してもらおうという議論が起こっては消えていきます。年金は選挙結果に直結するせいでしょうか?

ともあれ、とにかく会社員や公務員の被扶養配偶者であれば、それを届けることによって、自身では国民年金の保険料を払わずに3号被保険者として年金記録が管理され、国民年金の受給資格期間(保険料納付済期間)がカウントされていきます。

ただ、今でこそオンライン上で各種のデータが連携しはじめていますが、インターネットなんてなかった時代です。第3号被保険者の資格を得たときも、失ったときも、すべてはそのご本人から紙で申請してもらうことによって、年金記録を管理していました。ただ、現実問題として、全国民がすべからく年金の仕組を理解して「私は第3号被保険者ではなくなったから(になったから)市役所に届けなきゃ!」なんてことは到底無理な話で、第3号被保険者の記録は、実は当初からメチャクチャだったはずです。恐らくですが、ずっと昔から社保庁は気づいていたと思うのですが、なにせ社保庁は当時は国家公務金共済加入組なので、厚生年金には興味なかったんでしょうね。平成19年のいわゆる「消えた年金問題」以降に、さも今判明したような感じにしていましたが、それにはちょっと無理があるかと…。

話が横道にそれてしまいました。

上述のとおり、国民年金第3号被保険者は、第2号被保険者の被扶養配偶者です。被扶養者とされるには、原則として年収が130万円以下でなければなりません(130万の壁問題)。そのため、扶養している配偶者が会社を辞めたりして第2号被保険者でなくなったり、第3号被保険者自身が厚生年金保険に加入したり、所得が増えた場合などに、第3号被保険者の資格を失います。

例えば、夫が会社を辞めて、国民年金第1号被保険者になったとします(これもやってなかったりする。未納三兄弟の類)。普通の感覚で考えれば、その妻は当然第3号被保険者の資格を失うので、夫の申請と同時に妻の年金記録も処理すればいいのにと感じますが、妻自身もわざわざ第1号被保険者になったことを申請する必要があります。この手続を知らなかったり忘れたりしてしまうわけです。そのうち夫は他の会社に就職し第2号被保険者となり、妻は再び第3号被保険者に戻り、事実と記録が再び一致することになります。

第3号不整合問題のイメージ
 被保険者の種類
第2号第1号第2号
第3号第3号(?)第3号

そうすると妻は年金記録上ずっと第3号被保険者のままということになり(現実の生活ではずっと夫婦なので違和感はない)、後になってから「アレ?記録が間違ってるね?訂正しましょう」となります。他にも、このような状況になってしまうケースはあるのですが、第3号ではないのに第3号と記録されてしまっているものが多数あることを「国民年金第3号不整合記録問題」と言います。

第3号不整合問題のイメージ(訂正後)
 被保険者の種類
第2号第1号第2号
第3号第1号(未納)第3号

記録を現実に合わせるよう訂正した結果、第3号→第1号に変わった期間が、保険料未納期間になってしまいます。さらに、国民年金の保険料は時効が2年間ですから、すでに保険料支払期限が過ぎていると、もはや訂正した期間の保険料を支払うことはできません。このように保険料を払えないケースを「時効消滅不整合問題」と言います。救済措置として、「時効消滅不整合期間にかかる特定期間該当届」というものを提出し、「保険料未納期間」を「特定期間」に書き換えることにより、年金を受け取る権利(額は別の話)に不利益がないようにされています。

年金には「○○問題」が多すぎて、その度に救済する制度ができるため、どの問題とどの制度がリンクしているのか全く分からん!という社労士も結構多いのではないかと思います。

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