遺言・特別受益・寄与分・遺留分の関係

法定相続分という考え方があります。

遺言・特別受益・寄与分は、それぞれが法定相続分を変更する効果があるため、密接に関係しあっています。

遺留分は、遺言や特別受益、寄与分によって変更された法定相続分に対して、口出しできる権利といった感じでしょうか。遺言や特別受益、寄与分とはちょっと毛並みが違います。

遺言と遺留分はどちらが優先するのか、遺留分と特別受益はどちらが優先するのかなど、それぞれの関係性を「優先度の違い」から見ていきたいと思います。

なお、民法上「相続財産」と「遺産」を厳密に区別していないのですが、ちゃんと定義しないと意図が伝わらないので、ここでは「遺産分割の対象となるプラスの相続財産」=「遺産」として話を進めます。

遺言 vs 特別受益

特別受益は、遺言による遺贈(実際は贈与も)によって流出したはずの遺産を、法律の定めによって遺産とみなす(遺産の額に加える)ものですから、特別受益が遺言に優先するように感じます(これを相続分の持戻しといいます)。しかし、遺贈(実際は贈与も)の額が、すでに法定相続分以上であっても、その超えた部分を返還する必要はありません。また、そもそも、相続分の持戻しを遺言によって否定することがきます。よって明らかに遺言優先です。遺贈をもらえなかった相続人には不憫ですが、被相続人は多くの財産を分け与えたい別の人がいたということです。

結論:遺言>特別受益


遺言 vs 寄与分

寄与分は、遺産から遺言による遺贈の価額を引いた残りの額を超えることができないことになっていますので、ここは明らかに遺言優先です。特別の寄与をしたと思っている相続人には不憫ですが、被相続人はその寄与に報いるより、別の人に対する遺贈の方が大切だったということです。

結論:遺言>寄与分

寄与分 vs 特別受益

寄与分と特別受益は、それぞれ、遺産の額を計算する上で足すのか引くのかの規定なので、互いに優劣関係はありません。理屈上では、特別受益を受けたある相続人が、同時に特別の寄与があったということで、ひとりで遺産の額を足したり引いたりすることもあり得ます。

結論:同格(同趣旨)

遺言 vs 遺留分

遺留分は、遺産の額(相続分)そのものを増加減少させるものではないので、ちょっと毛並みが違うと申し上げましたが、遺言による相続分の変更や遺贈によって自己の遺留分が侵害された場合、遺留分権利者が権利を主張すれば相続人や受遺者(遺贈を受けた人)に対して金銭による補償を求めることができるので、その意味においては間違いなく、遺留分優先です。

結論:遺留分>遺言

ただし、遺留分侵害額請求の主張がなされたとしても、遺言そのものが無効になるものでないことに注意が必要です。

特別受益 vs 遺留分

特別受益があった場合、原則として、遺産の額に算入しなければならないので、その意味において、遺留分優先です。

結論:遺留分>特別受益

ただし、遺留分を主張する際に遺産の額に参入されるのは、相続人への10年以内になされた特別受益に当たる贈与に限られているので、どんなときでも遺留分が優先するという趣旨ではありません

寄与分 vs 遺留分

特別受益と寄与分のどちらが優先するかを定める条文はありません。ただし、特段の事情といえるような顕著な寄与があった場合、遺留分を害するような寄与分を定めることができるとする判例があります。要は、バランスの問題です。しかし、遺留分権利者は、受遺者又は受贈者にしか、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができないので、結局のところ、寄与分には手出しができないことになってしまいます。ですから、どちらが優先するか決めるとなると、寄与分優先としておきます。

結論:寄与分>遺留分

実際は簡単ではない

相続(が揉めた時)によく登場してくる用語を比較検討し、分かりやすい形で結論を出しましたが、では実際に、遺産の額や特別受益の額、寄与分の額がカチッと簡単に決まるかというと、かなり難しいです。というか不可能だと思います。例えば同じ不動産にしても、固定資産課税台帳の価格とするのか、不動産業者の実勢価格とするのか、不動産鑑定士の鑑定価格とするのかで、金額が変わるわけです。特別受益や寄与分、遺留分を主張するのはいいのですが、実際は大変だということを頭の片隅に置いて、主張すべきところ主張はする、引くべきところは引くという態度が必要ではないかと、当職は考えています。