老齢厚生年金の配偶者加給とは

原則として、老齢年金(基礎年金・厚生年金)は65歳から受給が始まります。そして、夫婦の年金は連動する仕組みなので、年金額は「世帯としていくらになるか」を基準に定まっています。現在の老齢年金は「夫が年上で長らくサラリーマン、妻が年下で専業主婦の期間が長い」夫婦をモデルケースとしているので、このような夫婦が、高齢期にどのように所得を得て生計を立て、いくら位必要となるかを考えて作られています。

まず、ご主人が65歳で退職し老齢年金の受給が始まったとします。この時、奥様はまだ62歳で老齢年金をもらえません。「夫婦二人の生活をモデルにして金額を決めてるのに、片方の年金だけでやっていけるわけがない!」となります。そのため、ご主人が65歳になってから奥様が65歳になり奥様自身の老齢年金が出るまでの間、扶養手当を出して、なんとか家計を維持してもらうことになります。この扶養手当に該当するのが「配偶者加給」です。この説明は、モデルケースに基づくものなので、奥様がバリバリのキャリアウーマンで、ご主人が専業主夫であっても、同様です。なお、配偶者加給は将来的に振替加算という別の加算に変わっていくことになります。

配偶者加給が支給されるための要件は次のとおりです。

配偶者加給が支給されるための要件
本人(被保険者)の要件配偶者の要件
老齢厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある者が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、生計を維持する配偶者がいるとき被保険者期間が20年以上の老齢厚生年金または退職共済年金、もしくは、障害年金を受けられないこと

本人(モデルケースのご主人)の要件として、老齢厚生年金保険(共済組合の期間は合算)に20年以上加入していることが必要です。当職はその話を直接耳にしたことはありあせんが、この配偶者加給の支給要件から「厚生年金は20年入らないと意味がない」と言われることがあるそうです。

配偶者(モデルケースの奥様)の要件として、被保険者期間が20年以上の老齢厚生年金または退職共済年金(合算されることもあります)、もしくは、障害年金を受けられないことが要件です。配偶者加給は、扶養手当ですので、配偶者自身にそれなりの年金が出るのであれば、扶養手当は不要ですよね、という理屈になります。そもそも、20年以上老齢厚生年金に加入していたら、奥様の年金にご主人の扶養手当として配偶者加給がつくレベルですので…。

ここまでの説明で「アレ?」っと思われた方は、非常に、感のいい人だと思います。障害年金はともかく、老齢年金は65歳からしか出ないのだから、65歳より前に老齢年金をもらう人がいるの?ということです。そうです。この65歳前の老齢年金とは、特別支給の老齢厚生年金のことです。ですから、配偶者側の老齢年金の不受給要件は、男性が昭和36年4月1日までに生まれた人、女性が昭和41年4月1日までに生まれた人にしか関係がないことになります。

配偶者加給の請求は、通常、65歳の年金請求の際に、生計を維持する配偶者がいるかどうかを確認することによって行われます。金額については、原則、224,700円なのですが、改定率を掛けたり別の特例による加給が上乗せされたりするので、本年度(令和2年度)の配偶者加給は、390,900円となっています。

ここで、ひとつ注意点を。

現在、ご主人(または奥様)の65歳からの老齢厚生年金に配偶者加給390,900円が加給されていたとします。近々、奥様(またはご主人)の特別支給の老齢厚生年金の支給が始まる予定ですが、その金額は280,000円です。それならば、特別支給の老齢厚生年金を受給せずに、配偶者加給をもらい続けたほうがマシ、となりますが、これはできません。将来的にいつか奥様(またはご主人)が自身の老齢年金を請求されたときに、遡って払いすぎた配偶者加給の返還を求められることになります。こうなると、すでに振り込まれた年金を返す必要があるので、手続的にも、経済的にも、精神的にもダメージありますので、特別支給の厚生年金の受給が始まった場合、速やかに請求をされることをオススメします。

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